株式会社リクルートは生まれなかったかもしれない

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一人で倒産会社の整理

昭和40年代私が30,2~3歳の頃、渋谷区にあった叔父の経営する建設会社が1億7千万円の手形詐欺の被害であえなく倒産。当時の貨幣価値は令和の貨幣価値の4分の一相当というから、今の貨幣価値にすれば約7億円に相当するらしい。

映画化された、高木 彬光の小説「白昼の死角」を地で行くような詐欺事件だった。経理の責任者としてただ一人最後まで残って倒産会社の後始末に半年かかった。その間、職にもつけずにいた。

会社の整理ができ、やくざ者の付きまといもなくなったので、新聞の求人欄に出ていた会社の面接を受けた。きちんとした大手のハウスメーカーだったが、面接官がひどかった。

態度が横柄で完全な上から目線の面接だった。強者の弱者に対する理不尽さを痛感した。売り手と買い手の関係は契約が成立するまでは対等のはずである。求人、求職の関係も同じだ。

腹を立てながら面接からの帰り道、通りがかりの本屋さんに立ち寄った。棚の中の背表紙に「スキル・インベントリーシステム」の聞きなれない文字が目についた。

手に取って立ち読みしているうちに、体が震えた。「これだっ!!」と思った。今、まさに感じていることが書かれていたからだ。胸にもやついていたものが一気に晴れ上がったような気がした。

元店長

ひらめいた

スキル・インベントリーとは、個人が今まで獲得した経験・技能・技術・知識などの能力(スキル)を棚卸して、データベース化したものを言う。

求職者・転職希望者等から登録者を募り、スキルをデーターベース化して求人募集をしている企業に配布すれば、必要とされる人材の発見を容易にでき、コスト削減もできる。求職者側も選択肢が広がり、より良い職場を得ることが可能となり、三方よしの収益化システムを構築できる。まだ日本に無いこのシステムを事業化すれば、大発展する可能性があると胸が躍った。

そこで頭をよぎったのが、職安法である。事業が軌道に乗ったところで中止命令を食らったらたまらない、と考えた。(法学部出身であるが故の順法精神が邪魔をした。)

そこで、厚生労働省の前身である労働省の本庁に出向き、対応した係官に事業化のアイデアを説明したら、にべもなく「だめです。職安法違反です。」と、取りつく島もない。食い下がっては見たが、まるで相手にされない。

やっぱりダメか!と落胆もひとしおだった。

それから数年たったある日、目についた広告を見てびっくりした。スキル登録希望者の募集広告である。その広告主が後に大企業となった「株式会社リクルート」である。

労働省の窓口担当者が、あんなずさんな対応ではなくもっと真摯な対応をしてくれていたら、今の「株式会社リクルート」は存在していなかったかもしれない。リクルート創業者は人材紹介業ではなく情報販売業と視点を変えて、職安法をすり抜けたのかもしれない。

元店長

東大出のリクルート創業者の知能に負けた。

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