横浜山手の住宅外構工事

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取引銀行の行員さんのご自宅の門と塀の改装工事を頼まれた。レンガタイル張りの新しい門と塀を作って欲しいとの依頼である。現場は。横浜の高級住宅地で名高い山手だ。

現地調査に伺うと高級住宅地の一角ではあるが、軽トラックも入れない細い道の奥まった場所が現場だった。土砂の運び出しや資材の搬入に一苦労するような場所である。

着工の日程が決まったので、細い道の両側に軒を連ねている10軒ほどの住宅へ、工事着工の
挨拶を済ませて事務所に戻ると、電話のベルが鳴った。

電話主不明「工事の挨拶に来たらしいが、工事なんか絶対させないからな!」それだけ告げて電話は切れた。

突然の思いもかけない電話に驚いた。
着工挨拶に伺った内の一軒かららしいが、どの家からの電話なのか特定できない。

交番に事前通告

一番先に思い浮かんだのは、やくざの金欲しさの脅しである。現場付近の家には誠意を尽くした挨拶をしてきたばかりだ。それ以外考えられない。

工事着工の日の前日、念のため現場近くの交番に出向き事情を説明し、注意をもって見回りするという返事をもらった。

打つ手は打った。あとは成り行き任せ。

万が一多少の攻撃を受けても、こちらは屈強な若者が5人、手にはスコップを持っており、簡単に負けはしない。むしろ、返り討ちにしても、正当防衛が主張できる。そのための交番への事前告知である。

お隣のご主人がスコップで殴り掛かってきた

着工日当日、5人の作業員を現場に向かわせた後、しばらくして現場責任者から電話がきた。

現場責任者「工事にかかったらすぐ、隣のご主人がスコップをもって殴りかかってきたので、皆んな退避して作業中止してますが、どうしますか?」

私「そのままでいてくれ。すぐ行くから」

車を飛ばして現場に着き、状況を詳しく聞いた。気に掛っていた問題の家がお隣さんだったとは驚きだった。

どんな事情があるのかを知ることが先決と考え、隣家を訪問した。出てきたご主人は私の顔を見るなり喧嘩腰の声で怒鳴った。まとめると話の内容はこうだ。

お隣のご主人の主張
自分は音楽家だ。家でピアノを弾くと、その度に隣から苦情がきた。やむなく、他に場所を借りてピアノを弾いている。
他人が出す音は許さぬが、自分が出す音は我慢しろは、理にあわぬ。
ましてや工事から出る騒音など聞いたら、音楽家としての自分の耳が壊れる。
その保証はお前ができるのか?

本牧の喫茶店で話し合いの結末

両家の関係はお互い様という世間の常識は通用しない関係のようだ。対決姿勢ではさらなる困難を招くと思い、隣家に対して同情者であり理解者であり、あなたの味方であるという態度を示すことで解決の糸口を探そうと考えた。

施主が勤めから帰宅したら、主人同士が会って2人だけで話し合いをするということになった。場所は何故か本牧のある喫茶店が指定され、私は喫茶店の外で待つように指示された。

本牧の喫茶店で話し合いの結果、工事期間1週間分のホテル代を翌日の晩に本牧の喫茶店で支払うという約束で話が付いたようである。

工事は再開された。

その日の夕方銀行から帰宅した施主が現場にいた私にこう告げた。

施主「銀行に行って、隣とのいきさつを話したら、そんな金は払うべきではないと皆に言われたから払わないことにした。」

一旦約束したものを、他人に言われたからと言って、反故にするのは道義的にいかがなものか?

元店長

世界で約束守る人種は日本人だけと思われているのに

案の定、本牧の喫茶店での話し合いは、今にも殴り合いの喧になりそうだった。私の仲裁で何とか収めたが、施主のご主人は言いたいことだけ告げるとさっさと帰ってしまった。約束を反故にされた隣のご主人は怒り心頭だったが、私には好意的だった。

隣のご主人「もう遅いからうちに泊まっていきなさい」とまで言った。

工事は続行し、完工した。その間、隣からは一言のクレームもなかった。

その後の両家の関係は、どうなったのだろうか?

私の心配することでは無いが、ますます犬猿の仲を深めたに違いない。

元店長

隣にバカが住んでいるとお互いが思っている。

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