syoutotu
渋谷の労働基準監督署から突然の呼び出しがあった。池袋の工事の関係資料をもって来いとのこと労働基準監督署から呼び出される心当たりが全くなかったので、言われた通りの関係書類を持って監督署に向かった。
担当官と向き合うと、いきなり「お宅の池袋の工事現場から賃金未払いの訴えが出ている。」思ってもみなかった事を告げられた。池袋の工事は2か月ほど前に完成し、関係先への支払いは全て完了している。
問題の工事は外注工事だった。初めて使う外注先だった。先方からの売り込みで、50才代の代表者が持参した工事経歴書を信用した結果だった。
工事に着手してからしばらくは何事もなかったが、半分くらい工事が進行した頃から現場に派遣している社員の現場監督から不安の声が漏れ始めた。そしてついに工事の継続が不能との報告があり、会社が直接雇い入れた作業班で残工事を完成させた。本来ならば会社が負担した費用を差し引いて外注代金を支払うべきところを、トラブルを嫌って、注文書の金額どうり全額を支払った。注文書と領収書の金額が一致した書類を示しながら、こちら側に落ち度のないことを主張した。

〇〇一家はプロレスのスーパースター力道山が顧問をしていた有名な暴力団である。外注先の代表者は、その筋の者を思わせる雰囲気は無く、大柄で堂々とした体つきではあったが親しみやすい顔だった。
監督署から帰った翌日、問題の本人から電話がかかってきた。
外注先の代表者 「工事が赤字で賃金が払えない。赤字の分、金を払ってくれ。」
私 「工事も中途半端で何言ってる。こちらの作業代差っ引くところ全額払ってやってるじゃないか。
お宅の原価がいくらで、儲けがいくらかまで全部計算済みだ。」しばらくやり取りがあって、
最後に言った言葉は
外注先の代表者 「俺んところにゃ猟銃もあるし、日本刀もある。」
私 「刃物が怖くて、金物屋の前が通れるか。」と返した。
外注先の代表者 「会社の帰り道、気を付けるんだナ。」と、すごんで電話は切れた。


怖いもの知らずの30歳ごろの話である。
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