建設会社の経理責任者をしていた時の話である。当時事務所は世田谷区にあった。所轄の税務署は北沢税務署。経理を担当するようになって何度目かの税務調査を受けた時、調査官が請求書の束をかなり早い速度でパラパラめくりながら、ぴっと抜き出す請求書がある。
そうして抜き出した数枚の請求書を示しながら「この請求書の領収書を出して下さい」と言われ、示された請求書を見て愕然とした。示された数枚の請求書は、全て身に覚えのある問題のある請求書ばかりだ。経費では落とせない支出をごまかす為の自作の請求書ばかりである。
分厚い書類の中から瞬時に不正な書類を的確に抜き出す調査官の作業は神業に見えた。

ほんとにびっくりしたなァ~
リズムが違うのである。数ある書類に目を通していると、一定のリズム感が生まれる。そのリズム感を壊しているのが不正な書類なのだ。限りなく100%に近い確率で選別できた。



自分も、出来るようになった。
北沢税務署から税務調査の連絡がきたので、顧問の税理士に知らせると、「調査官の昼食に極上のうな重を出しなさい。うな重に手をつけなければ、問題あり。手を付ければ問題なし。」とのことだった。
税務調査の当日、顧問の税理士に言われたように、2人の調査官に極上うな重を昼食に出すと、2人ともきれいにペロりと平らげた。「これで問題なし」と思っていたら、後日1,000万円近い追徴税の通告書が届いた。
「話が違うじゃん」到底払える金額ではない。
建設業会計は一般商業簿記とかなり違いがある。その違いを利用して、会計処理に勘違いがあった為、と言うことにして国税の機関に不服申し立てをおこなった。なんと、こちらの言い分が全面的に認められて、追徴金は全額取り消された。「ヤッホーバンザイ」である。
翌年のある日、事務所のドアがノックもなく開かれると「動かないでッ! 両手は机の上に!」いきなり怒声が響いた。まるで銀行強盗のホールドアップのシーンである。
税務査察であることが告げられると、真っ先に金庫が開かれ、預金通帳のすべて、帳簿類等がごっそり持ち去られた。
翌年も同じことが繰り返された。またその翌年も同じことが繰り返された。
その年、本社を渋谷区に移転した。その後、税務調査はぴたりと止まった。



教訓:国を相手に喧嘩すると、息の根が止まる程、いじめられる事を肝に銘じよ!!。
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