店の前をよく通る中年の上品な奥様

店の前を時々買い物かごを下げて通り過ぎる中年の上品な奥様がいた。店主の私と視線が合うと、軽い会釈をして通り過ぎてゆく。
そんなある日、工事依頼の電話があり近くの住宅群の中の一軒に伺うと、いつも見かける、あの上品な奥様のお宅だった。
工事打合せによそよそしい奥様
住宅外回りの工事で、門と塀を作ってほしいとの依頼だった。ご主人と打ち合わせをしているとき、ふと違和感を感じた。
顔みしりのはずの奥様が、まったく近づいて来ない。よそよそしいのである。一通りの手続きを済ませてから工事に取り掛かった。
一日の作業を終えた職人が憤慨して帰ってきた。
職人「あの現場にはもう行かない。ほかの職人を回してくれ。やってられるかあんな現場。」憤慨の理由を聞くと
職人「ご主人が職人の後につきっぱなしで、すべての作業にスケールを当てて計っている。」作業に手抜きが無いか、一つ一つ作業を確認しているご主人が職人のプライドを傷つけたのだと分かった。
なんとか職人をなだめて工事を継続させることにはなったが・・・

工事が完成したので、代金の集金に伺うと、
原子力船むつ設計者のクレーム
ご主人「門柱の垂直に5ミリの狂いがある。門柱を取り壊してやり直せ」
水平器を当てて確認するときちんと垂直が出ており、狂いは発見できない。肉眼でも違和感はない。
ご主人「さげ振りで確認した。」
さげ振りとは糸の先に重りを付けてぶら下げ、重りが静止すると糸は垂直に垂れ下がる。
私「ご主人のおっしゃるとおり、やり直してもいいですが、コンクリートブロックは精密機械で作ったものではないので一個一個に多少の狂いがあります。それを積み重ねて作った門柱ですから厳密には多少の狂いはあるかも知れません。水平器で狂いが無く目で見て違和感が無ければ、他の専門家に見せても検査合格です。」

工事のやり直しは料金3倍いただきます。
ご主人は、いやいやではあるが納得したようで
ご主人「ついでに、車庫を作ってほしい」とおっしゃった。
難しいことになりそうな予感がしたので、工事が立て込んでいるので他の業者に依頼してほしいと丁寧にお断りした。ついでにご主人の職業を聞いた。
ご主人「原子力船むつの設計者だ。」と答えた。
原子力船むつには設計上の寸法と製作上の寸法に誤差は無いのか?と聞いたら、どんな返事が返ってくるのか聞いてみたかった。
他の業者に依頼した車庫工事は、4~5日もあれば完成するのに、工事着手後、未完成のまま放置され半年ほで経ってやっと完成した。
柱だけで、屋根のないカーポートの未完成の工事現場の前を通るたびに、まだもめているのかとおかしくなった


クレーマーの共通点がここでも確認できた。
奥様が近づいて来ない。
奥様が主人のやることには私は関係ありませんという態度はよく理解出来ました。



こういうご主人を持つ奥様は大変だネ。
コメント